保険適用化の実現と拡充に向けて

リンパ浮腫診療に先駆的に取り組んできたドイツでは、1974年にリンパ浮腫診療の保険適用化が認められ、原発性、続発性に関わらず、リンパ浮腫と診断されたすべての方が、より早期から治療が受けられる体制があります。当時、国際リンパ学会において標準治療として認められる保存的治療「複合的理学療法」を体系化されたフェルディ教授ご夫妻および独理学療法士協会元理事長のハンス・ハルトック先生らの多大なご尽力により保険適用化が実現されました。

わが国では長年、リンパ浮腫には治療法がない、完治しないと言われていました。十分な治療やケアが受けられず、患者さまは余儀なく悪化の一途を辿られていました。この日本の現状を改善させ、日本で暮らす皆さまが安心して治療を受けられたり、日常生活を過ごせるような環境を築くために、2005年から保険適用活動を本格的にスタートしました。

そして2008年、患者ご家族や医療者が一丸となり幾重もの課題や難義を乗り越え、積年の願いであった「リンパ浮腫指導管理料」や「四肢リンパ浮腫の重症化を防ぐための弾性着衣の療養費支給」が保険収載されました。その後も保険適用内容の拡充化のための努力を重ね、2016年には「複合的治療料」および「原発性リンパ浮腫の適用拡大」が認められ、徐々に拡充を遂げながら、現在に至ります。

30年前の状況から現在のリンパ浮腫診療環境にまで前進できたことには万感胸に迫るものもありますが、リンパ浮腫診療を必要とされるすべての方に対応できていないという厳しい現状もあります。

現在の根幹的な課題のひとつとして、がん治療後遺症のリンパ浮腫において「手術を受けた方のみが対象」となっているという現実です。

同じくリンパ浮腫を発症されているにも関わらず、がん治療(手術)以外の原因のために生じたリンパ浮腫[ 例)センチネルリンパ節生検後、放射線や抗がん剤治療後、頭頚部がん治療後、交通外傷や火傷等による組織損傷等]については、保険適用疾患の対象外とされています。

このため適用疾患対象外とされる原因によるリンパ浮腫に対する保険適用化および既存の適用内容の充実化を目指し、厚労省への働きかけを続けておりますが、2024年度の診療報酬改定では進展することができませんでした。

患者ご家族の皆さまは、毎日切実な思いでリンパ浮腫と向き合っておられます。診療報酬や社会支援のあり方は、就労や家計を含めた生活の質の全般にも直接的に影響しています。

微力ながらもわたし自身も、リンパ浮腫により日々難渋されている方々のお力になれるよう取り組んでまいります。ぜひ全国各地からもリンパ浮腫の保険適用要件の拡充化のために皆さまの声を届けていただけることを願っております。

2007年、あすなろ会、リンパの会、オレンジティ代表の皆さまとともに厚生労働省、医師会に提出した24万人の署名とアンケート調査結果が保険適用実現の大きな力に!

リンパ浮腫指導料及び複合的治療料

改定に関する情報

2020年(拡充) リンパ浮腫指導管理料及びリンパ浮腫複合的治療料の見直し Ⅱ-7-7-⑨

2020年(拡充) リンパ浮腫指導管理料及びリンパ浮腫複合的治療料の見直し

2018年(拡充) リンパ浮腫に係る報告等について

2008年(新設) B001-7リンパ浮腫指導管理料について 中央社会保険医療協議会(中医協総⼀1より)

四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給

2020年一部改定(拡充) 「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について」の一部改正について

2008年(新設) 四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給について

2008年(新設) 四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について

※弾性着衣の療養費申請の流れについてまとめました。ご参考になりましたら幸いです。

慢性静脈不全による難治性潰瘍治療に係る療養費の支給

2020年4月より「慢性静脈不全による難治性潰瘍治療のための弾性着衣等(弾性ストッキング及び弾性包帯)の購入」に係る療養費の支給が認められるようになりました。

[対象者] 以下の方が、医師の指導のもとで弾性着衣等を購入した場合
      ※慢性静脈不全による難治性潰瘍治療が必要な方

[対象商品] 商品の着圧が30㎜Hg以上の弾性着衣
      ※医師の判断により15㎜Hg以上のものでも可能です。

[支給回数] 1回限り。ただし治癒後再発した場合は、再度支給対象となります。

[支給枚数] 医師の指示がある装着部位ごとに、1回の購入で2着まで。パンティストッキングタイプの弾性ストッキングは両下肢で1着になることから、両下肢に必要な場合も2着が限度となります。

[支給金額] 下記の金額を上限として、購入費用から自己負担額を差し引いた金額が支給されます。
       ・弾性ストッキング/28,000円(片脚用 25,000円)
       ・弾性包帯/14,000円

【詳細】通知/書式ダウンロード 20200327-1 【課長通知】(慢性静脈不全)

原発性リンパ浮腫について

現在、難病情報センターにおいて「原発性リンパ浮腫」ついて掲載されていますが、これは「研究奨励分野」としての位置づけであり、指定難病として認可できるか研究がなされている状況です。

・原発性リンパ浮腫(平成21年度) – 難病情報センター

・循環器系疾患分野|原発性リンパ浮腫(平成24年度) – 難病情報センター

原発性リンパ浮腫の患者動向と診療の実態把握のための研究 | 厚生労働科学研究成果データベース

【研究課題データ】原発性リンパ浮腫全国調査を基礎とした治療指針の作成研究 | 日本の研究.com

小児リンパ浮腫について

平成30年4月1日より「原発性リンパ浮腫」および「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群」が「小児慢性特定疾病医療費助成制度」の対象となりました。

概要については以下のリンクをご確認ください。 

小児慢性特定疾病情報センター

『平成30年4月1日から追加された疾病の一覧』

『医療費助成に係る自己負担上限額』

〈厚生労働省の資料〉『小児慢性特定疾病(平成30年度実施分)に係る検討結果について』p.4, 6

♢保険適用実現のための取り組み

2022年 第4期がん対策推進基本計画に関するリンパ浮腫に関する要望書

2009年 チーム医療推進協議会 日本医療リンパドレナージ協会による取り組

      ・これまでの協議会の歩み

2007年 「リンパ浮腫治療の保険適用の要望」に対する連絡協議会 72団体 による24万人の署名活動および陳情